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1.12. いささか哲理的工夫を要す

気管切開の事、京阪間に伝へられてより、書翰日々輻輳して手術後経過の状を問ひ来るものには、余妻をして経過極て良好なりと報ぜしむ。 而して世人多くは癌腫における気管切開の何物たるを省せず、直ちに認めて根本的切開と為し、更に書を発して大に祝賀し来る者比々皆これなり、いはゆる一年半はただ余と妻とこれを知るのみ。 即ち東京来書中二児の葉書若くは封書あり、いふ、父上御病気追々快復云々と。 此処父親たる余においていささかストイツク的哲学の工夫を把り来りて、自ら防がざるべからず、人間もまた愚痴なる動物なる哉、呵々。

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