余が妻は、余があらかじめ患ひしよりは意外に哲学的にて、かの一年半において絶て苦情を言はず、全然余の旨趣を採り務めて目前を楽しみ、以て自ら慰藉せしと見へ、今この病院に居るも、何となく陽気にて宛然温泉場に出養生しつつあるが如く、うつらうつら日を送りその中創口も全く癒着し、ただ咳嗽いまだ去らざるのみ、因て六月十八日出院して再び中の島小塚旅館に帰れり。