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1.27. 堺市に移る

七月四日、大阪中の島小塚旅館を辞去り、妻と共に堺市に赴く。 これより先き去三十三年春、余堺の友人某々ら並に技師大上某の請を容れ大阪に来り、大上連年思を覃し力を殫して辛うじて好成績を得るに至りたる練炭製造の業を創するがため、砲兵工廠に請ふて更に化学的試験を為さんとす。 余素より提理太田某と善きを以て、余ために斡旋の労を取り、試験成績極めて良好にして同人皆大に喜び、その後堺市市の町において事務所を設け、合名若くは合資の一会社を組織せんとす。 是に至り大上ら余に勧むるに、該事務所において疾を養ふことを以てす。 余已に久しく小塚旅館に居り、やや意に倦むあるを以て、直ちに堺人の勧に従ひ事務所に来れり。 宅甚だ宏ならずといへども、構築整然として庭園すこぶる観るべく、大気極めて清涼なり、ただこの一事既に以て一切他事を贖ふて余あるに足る、いはんや主人大上、その他共に練炭事業に従事して此に居る者、皆洒然無害の長者なるをや。

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